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パレード

パレード



正直なところ、人間の、あるいはこの世の中の、悪意という悪意に、私はすっかり飽きている。もちろん、飽こうが飽くまいがこの世に悪意は存在するし、目をつぶって過ごそうなんて、そんなの楽観的すぎるよ、と笑う人がいるかもしれない。ただ、そう言って笑おうとする、その悪意にも、私はもう飽きている。

『 大垣内琴美(23歳)無職 』 より



「一緒していい?」と声をかけてきた女性は、あたしの返事を待つふうでもなく横に並び歩調を合わせた。
その強引さに、あたしは少し身構えた。



彼女のポークソテーが切り刻まれていく。
いつになったら食べ始めるのだろうというあたしの心配をよそにポークソテーはどんどん小さくなっていく。

「だからね、私ははっきり言ったの。『あんな男と結婚しても幸せになれないって言ったでしょ』って。私、そういうところは鋭いから、この男は絶対浮気するなって直感でわかっちゃうの」

そんなことよりポークソテー。

「私の忠告をきいていればあんな辛いだけの結婚生活を送ることもなかったのに。変なところだけ頑固なのよその子。だから周りの人の言うことなんてぜんっぜんきかないで無理やり結婚したの。それなのに結局1年半で別れたのよ?親友だけど、ご祝儀かえしてーって感じ」

ひと際大きくなった彼女の声が合図だったかのように、ここでようやく彼女の話の内容が頭に入り込んできた。
すると急に腹が立った。

親友が不幸になると本当にわかってたのなら全力で止めりゃ良かったじゃんとか、説得しかねて披露宴に出て笑顔で祝福したんなら、あとは全力で応援して愚痴聞いて一緒に怒ってあげりゃいいじゃんとか、「なんでこんな男と結婚しちゃったんだろ」って一番思ってるのは本人だよとか、つうか親友に十人並みの説教されたくねーとか、とにかく何もかもに腹が立った。
でも、たとえあたしがそう言ったところで彼女の心は動かないだろう。
なぜなら、彼女が食事を疎かにしてまで話しているのは「離婚した親友の話」ではなく、「親友よりも人を見る目がある私の話」なのだから。



結局あたしは、たくさんの言葉を呑みこんで、一番言いたかったことだけを言った。
すると彼女は「あ、ほんとだ」と、今初めて気づいたみたいに、自分がナイフで切り刻み続けたポークソテーを見た。
そして、小さく小さく切り刻まれたポークソテーをフォークですくいようやく口に運んで「挽肉みたい」と言うと、金属音に似た耳障りな声で楽しそうに笑った。


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   現在公開中の映画 『 パレード 』 は原作の匂いそのまま。
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2010/03/05(金) 18:57 | BOOKSTB:0

ダーク

ダーク (上) (講談社文庫)ダーク (下) (講談社文庫)


退屈だったわけではない。
会社に行けばとりあえずは余計なことを考えずに居られたし、仕事を終えて友達と会うのは楽しく、新しい出会いがあればそれなりに浮かれもした。
ただ、たとえこれから先、働いて得た幾許かのお金で呑んで食べて笑って寝て起きてまた働くという平凡な生活を繰り返そうと、何かの拍子に自分を取り巻く環境が劇的に変わろうと、いずれにせよ、二度と再び心の底から笑える日は来ないだろうという気が、漠然としていた。
向上心や向学心を含む、全ての意欲が失せていた。
何も考えず何も吸収せず、それまでに蓄えた知識と体力とお金を消費して暮らし、それが尽きたときにもし自分が独りだったなら、生きることにはなんの未練もなくなっているであろうことが容易に想像できた。
心が死にかけている自覚はあったが、それをどうにかしたいとは思わなかったし、そもそも、人に心を開く気力もなかったから、たとえどんな名医にかかろうと治るはずはないと思っていた。

心が蘇生するのに2年かかった。
3日やそこらで仮死状態に陥ったことを思えば随分時間がかかったが、時の長さを想うよりまず驚いた。
なぜなら、心が呼吸し始めるきっかけになったのが、自分の中に突如湧き起こった、猛烈な怒りだったからだ。

怒りを他人にぶつけてしまわぬよう必死で押し込めている最中に聞いた、耳障りな程に大きな心拍音や、身体中の血が増水した川のように轟音をあげながら廻っているような錯覚や、脳が痺れ視界がぎゅっと狭くなり、カメラのファインダーから世の中を覗いているかに見えた景色など、蘇生した瞬間のことは今でもはっきり覚えている。
そして、そんな未知の感覚と格闘しながら、「もしかすると、人はこんな感覚に襲われた時に誰かを殺してしまうのか」と他人事のように考えている自分自身に狂気を見て寒気がしたことも。

あたしは確実に、怒りによって還ってきた。
それが、2年の間、喜怒哀楽の中で最もあたしに欠けていた感情だったと気付いたのは、それから更に半年後のことである。


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   賛否両論ありそうな村野ミロシリーズ。
2009/10/02(金) 16:26 | BOOKSTB:0

悪いことはしていない

悪いことはしていない


会社勤めをして3年くらい経つと、「知らなかった」「気づかなかった」「そうなるとは思わなかった」で仕事上のミスがなんとかなることはまずない。
それどころか、本人が意図しようがしまいがその裏に、「それならそうと言ってくれれば間違わなかったのに」という責任転嫁の意が見えてしまうそれは、火に油を注ぐ可能性を多分に孕んだ言葉でもある。
それだけリスキーな言葉なのに、こういう言い訳をする人は意外に多い。
そして、こういう言い訳をする大人は往々にして、自分の気持ちにだけ敏感で他人の気持ちに鈍感だから、他者の気持ちを汲めなかった時でも迂闊に、「知らなかった」「気づかなかった」「そうなるとは思わなかった」と言ってしまう。
だから、人間関係で揉めるし衝突もする。

「知らなかった」「気づかなかった」「そうなるとは思わなかった」のは、積極的に知ろうとせず、相手の立場に立って考えなかっただけのこと。
万が一、本気で知ろうとしたのに知り得なかったり、本気で考えたのに答えが出なかったり間違った答えが出たりしたのなら、金輪際、自分の洞察力や想像力を信じちゃいけない。

自分が何気なく発している言葉にそういう意図が見え隠れしていると自覚できない人とのコミュニケーションに、あたしはとことん不向きで、自衛のため、気に障る言葉を見ない・聞かないスキルばかりが上達していく。
そうか。
だからあたしには友達が少ないんだ。


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 登場人物の誰にもひとつも共感できないという稀有な小説。
2009/08/10(月) 17:09 | BOOKSTB:0

楽園

楽園〈上〉 楽園 下


だが、この主に女性を標的とした連続誘拐殺人事件に、犠牲者は両手の指に余るほどいた。

上巻より



3回読み返してようやく、この1行の意味が判った。
ちょうど、Webで口語に近い文章やニュース記事ばかり読んでいると小説を読む力が衰えるのではないかと考えていた矢先だったから、自分がこの一文のどこでつっかかったのかが気になった。
句読点の位置か指示語の使い方か。
いずれにせよ、この一文をあたしが書くと、「だが、主に女性を標的としたこの連続誘拐殺人事件の犠牲者は、両手の指に余るほどいた」という至極平凡な文章になってしまう。
やばい。
読む力だけでなく、書く力も鍛えなくては。

と、それで思い出した話。

中学1年の担任は、生徒たちくらいの子供がいそうな年齢の国語の先生だった。
セミロングの真っ黒な髪に強めのパーマをかけ、いつもワインレッドの口紅をつけていた。
その担任にどうやら自分が嫌われているらしいと気づいたのは、入学してから2ヶ月も経っていない頃だった。

ある日先生は唐突に、クラス全員の前であたしが書いた作文を黒板に書き写し、「句読点の打ち方が間違っている」と言った。
何の前触れもなく始まったダメ出しに生徒は一様にキョトンとしていたが、察しない生徒たちに苛立ったかのように、先生は喉を詰めたような声で続けた。

「これは、話し言葉を尤もらしく書き出しただけの、乱れた日本語と間違いだらけの文法を使った、粗悪な恥ずべき文章です」

後にも先にもこれだけ酷評されたことはない。
だが、悪い例として挙げられた文章を書いた張本人であるあたしが、徐々に赤らむ先生の顔を見ながらそのとき思っていたのは、「先生はあたしのことが嫌いなんだな」ということくらいなものだった。
雑読している中で、自分には、好きな文章と嫌いな文章があることに気づいた頃だった。
加えて、1年の修了式を終えたらどこか別の街の中学に転校することが判っていたあたしは悪い意味で転校慣れしてしまっていて、だから、教師や生徒に好かれなくとも平気だったし、己を正す気も阿(おもね)る気もなかった。
先生は、まるで取り返しのつかない大きな罪を犯した生徒を正すかの如くどんどん激昂していったが、そのダメ出しがどんな風に収束したのかは覚えていない。
ただ、自我の強まる中学生に先生という立場の大人が放った言葉は、その後多大な影響を及ぼした。
クラスの大半が作文を書けなくなってしまったのだ。
中には学級日誌に書く2、3行の文章すら書けなくなる子もいたらしく、それは、当時としては珍しく父兄の間で問題視され、当事者である生徒は親の口から事の成り行きを聞かされることとなった。
だが、いつも肝心なことは言葉足らずなうちの親があたしに教えてくれたのは、学校と先生が謝罪文を書いたということと、その謝罪文こそが、言い訳だらけの粗悪な恥ずべき文章だった、ということだけだった。


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   ちょっとは先生の言うことを聞いてたら良かった、と今更思っても遅ぇ。
2009/07/08(水) 15:44 | BOOKSTB:0

猫を抱いて象と泳ぐ

猫を抱いて象と泳ぐ


麻雀と将棋と囲碁は父親に、花札とチンチロは母親に、ポーカーとブラックジャックとバックギャモンは、19歳で出会った男に教わった。
そのせいか、生身の人間と向き合って、表情を見、小さな溜息をも聞き逃すまいと耳を澄まし、間の意味を考え、脳が痺れるほど頭を使ってするゲームが好きだ。
が、そういうゲームの中で唯一、ルールすら知らずに今に至っているものがある。

というわけで。
あまりにベタだが今あたしは、猛烈にチェスがしたい。
たとえそれで、自分の脳が人より劣っていると思い知ることになっても構わないから、猛烈にチェスがしたい。


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   化粧ポーチの中にサイコロを3つ偲ばせている女はモテない。
2009/07/06(月) 13:26 | BOOKSTB:0
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