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楽園

楽園〈上〉 楽園 下


だが、この主に女性を標的とした連続誘拐殺人事件に、犠牲者は両手の指に余るほどいた。

上巻より



3回読み返してようやく、この1行の意味が判った。
ちょうど、Webで口語に近い文章やニュース記事ばかり読んでいると小説を読む力が衰えるのではないかと考えていた矢先だったから、自分がこの一文のどこでつっかかったのかが気になった。
句読点の位置か指示語の使い方か。
いずれにせよ、この一文をあたしが書くと、「だが、主に女性を標的としたこの連続誘拐殺人事件の犠牲者は、両手の指に余るほどいた」という至極平凡な文章になってしまう。
やばい。
読む力だけでなく、書く力も鍛えなくては。

と、それで思い出した話。

中学1年の担任は、生徒たちくらいの子供がいそうな年齢の国語の先生だった。
セミロングの真っ黒な髪に強めのパーマをかけ、いつもワインレッドの口紅をつけていた。
その担任にどうやら自分が嫌われているらしいと気づいたのは、入学してから2ヶ月も経っていない頃だった。

ある日先生は唐突に、クラス全員の前であたしが書いた作文を黒板に書き写し、「句読点の打ち方が間違っている」と言った。
何の前触れもなく始まったダメ出しに生徒は一様にキョトンとしていたが、察しない生徒たちに苛立ったかのように、先生は喉を詰めたような声で続けた。

「これは、話し言葉を尤もらしく書き出しただけの、乱れた日本語と間違いだらけの文法を使った、粗悪な恥ずべき文章です」

後にも先にもこれだけ酷評されたことはない。
だが、悪い例として挙げられた文章を書いた張本人であるあたしが、徐々に赤らむ先生の顔を見ながらそのとき思っていたのは、「先生はあたしのことが嫌いなんだな」ということくらいなものだった。
雑読している中で、自分には、好きな文章と嫌いな文章があることに気づいた頃だった。
加えて、1年の修了式を終えたらどこか別の街の中学に転校することが判っていたあたしは悪い意味で転校慣れしてしまっていて、だから、教師や生徒に好かれなくとも平気だったし、己を正す気も阿(おもね)る気もなかった。
先生は、まるで取り返しのつかない大きな罪を犯した生徒を正すかの如くどんどん激昂していったが、そのダメ出しがどんな風に収束したのかは覚えていない。
ただ、自我の強まる中学生に先生という立場の大人が放った言葉は、その後多大な影響を及ぼした。
クラスの大半が作文を書けなくなってしまったのだ。
中には学級日誌に書く2、3行の文章すら書けなくなる子もいたらしく、それは、当時としては珍しく父兄の間で問題視され、当事者である生徒は親の口から事の成り行きを聞かされることとなった。
だが、いつも肝心なことは言葉足らずなうちの親があたしに教えてくれたのは、学校と先生が謝罪文を書いたということと、その謝罪文こそが、言い訳だらけの粗悪な恥ずべき文章だった、ということだけだった。


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   ちょっとは先生の言うことを聞いてたら良かった、と今更思っても遅ぇ。
2009/07/08(水) 15:44 | BOOKSTB:0
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