RANKING



newカテゴリで頑張ります。


READING BOOK

Nのために

LINK

当ブログはリンクフリーです。

  夏目のブクログ
  Amazon
  楽天ブックス

PROFILE

夏目

夏目
  片付けられない女魂

ENTRY

ARCHIVE

CATEGORY

SEARCH

RSS

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/--(--) --:-- | スポンサー広告

ダーク

ダーク (上) (講談社文庫)ダーク (下) (講談社文庫)


退屈だったわけではない。
会社に行けばとりあえずは余計なことを考えずに居られたし、仕事を終えて友達と会うのは楽しく、新しい出会いがあればそれなりに浮かれもした。
ただ、たとえこれから先、働いて得た幾許かのお金で呑んで食べて笑って寝て起きてまた働くという平凡な生活を繰り返そうと、何かの拍子に自分を取り巻く環境が劇的に変わろうと、いずれにせよ、二度と再び心の底から笑える日は来ないだろうという気が、漠然としていた。
向上心や向学心を含む、全ての意欲が失せていた。
何も考えず何も吸収せず、それまでに蓄えた知識と体力とお金を消費して暮らし、それが尽きたときにもし自分が独りだったなら、生きることにはなんの未練もなくなっているであろうことが容易に想像できた。
心が死にかけている自覚はあったが、それをどうにかしたいとは思わなかったし、そもそも、人に心を開く気力もなかったから、たとえどんな名医にかかろうと治るはずはないと思っていた。

心が蘇生するのに2年かかった。
3日やそこらで仮死状態に陥ったことを思えば随分時間がかかったが、時の長さを想うよりまず驚いた。
なぜなら、心が呼吸し始めるきっかけになったのが、自分の中に突如湧き起こった、猛烈な怒りだったからだ。

怒りを他人にぶつけてしまわぬよう必死で押し込めている最中に聞いた、耳障りな程に大きな心拍音や、身体中の血が増水した川のように轟音をあげながら廻っているような錯覚や、脳が痺れ視界がぎゅっと狭くなり、カメラのファインダーから世の中を覗いているかに見えた景色など、蘇生した瞬間のことは今でもはっきり覚えている。
そして、そんな未知の感覚と格闘しながら、「もしかすると、人はこんな感覚に襲われた時に誰かを殺してしまうのか」と他人事のように考えている自分自身に狂気を見て寒気がしたことも。

あたしは確実に、怒りによって還ってきた。
それが、2年の間、喜怒哀楽の中で最もあたしに欠けていた感情だったと気付いたのは、それから更に半年後のことである。


    人気BLOG RANKING
   賛否両論ありそうな村野ミロシリーズ。
2009/10/02(金) 16:26 | BOOKSTB:0
トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://natsume3am.blog37.fc2.com/tb.php/19-7cccc69c

Copyright(C) 2009-2010 午前3時、万年床で見る光芒 All Rights Reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。